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風邪の季節―免疫力を高めて健康に過ごしましょう

なぜ風邪を引くと熱がでるのか

風邪の季節―免疫力を高めて健康に過ごしましょう  本格的な風邪の季節です。 インフルエンザはもちろんですが、一般的な風邪の症状でも発熱すると、仕事や勉強に障害が出てとても厄介です。
 そこで、今回は、風邪等で発熱するメカニズムと、免疫力を高めるポイントを紹介します。
細菌やウイルスなどの病原微生物が体内に侵入すると、免疫(自然免疫、獲得免疫)の働きで脳の内の「視床下部」というところにある体温調節中枢から、体温を上げるように指令が行きます。 この指令を受けた身体は、指示された体温まで上昇させるために、①体表面の血管を収縮させ、②皮膚の汗腺を閉じて熱の放散を止め、③一方で筋肉を震わせ収縮させて、発熱を促します。

 一般的に、免疫を担当する細胞の活性は、平熱より高い温度の方がより強まります。 だから、風邪などで体温を上げる(上がる)のは、病原体に対する防御能力を高めるためなのです。 体温が平熱であっても、寒気や悪寒を感じるのは、指示された体温を目指して、身体が熱産生を行っているからです。

 体温が上がり始めると、熱産生にエネルギーを集中させるために、身体は他の機能を低下させるようになります。 けだるさや頭痛、頭が働かずにボーッとした感じになるのはそのせいです。 やがて体温上昇がピークに達すると、免疫応答もピークに達します。 ピークに設定される体温は、病原体の種類や、個人の体質にもよります。 インフルエンザウイルスの場合には、しばしば設定温度が高いので、罹った人はかなり消耗してしまうことになります。

風邪の季節―免疫力を高めて健康に過ごしましょう  時間が経過し病原体が駆逐されると、免疫担当細胞の活性を高めておく必要がなくなるので、設定温度を解除して平熱にリセットするよう新たな指令が行きます。 それに応じて、身体は汗をかいて熱を放散し、体温は平常のレベルに下がります。

 よく、風邪をひいて微熱があり、多少なりとも症状があると、鎮痛解熱剤が処方されます。 しかし、免疫機構の活性化と体温との関係をみれば、本来は、少なくとも38℃くらいまでの発熱では、解熱剤を投与せずに自身の免疫機能を十分に働かせたほうが、ピーク時の症状は多少強くても、早く治ることが多いのです。

身体を内側から温め、体温を高める

 普段の生活でも、体温を適切な範囲に保つようにすることが大変重要です。 そのためには、体を冷やして体温を下げるような生活習慣を改めることと、自分自身の熱産生を積極的に高めることが必要です。 内側から温める努力をすることが重要です。

1)体を冷やす生活習慣を改める)
       
  1. 水分の多い生野菜や冷たい飲食物を摂り過ぎない。
  2. 体を冷やす食材を摂り過ぎない。
  3. 薬を必要以上に服用しない:
    消炎鎮痛薬を数か月以上、長期に服用すると、交感神経系が緊張して血管が収縮し、血流が悪くなると考えられています。
  4. 防腐剤・添加剤の入った食物・飲料水を摂り過ぎない:
    慢性的に摂取すると、自律神経系のバランスが乱れ、交感神経系の緊張を招くとされています。
  5. 暴飲暴食をしない。


2)積極的に熱の産生を高める
基本的には、筋肉を使い、血液の循環をよくすることです。

       
  1. 筋肉を鍛える・筋肉を使う: 筋トレ自体で熱を産生し、さらに筋肉の量が増えることで基礎代謝による熱産生も高まります。
  2. 有酸素運動(ウォーキングや軽めのジョギングなど):
    循環を良くして血管を拡張し、産生した熱を全身に廻らせます。
  3. シャワーで済ませずに、風呂に入って湯につかる。
  4. 腹式呼吸:
    自律神経のバランスを整え、交感神経の緊張をほぐします。
  5. 家の中では裸足でいる: 足裏を刺激し、血流を良くします。

特に体温が35℃台の方は、普段から積極的に体を内側から温める努力をして下さい。

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筆者 

土肥 眞
東京大学病院 アレルギー・リウマチ内科

経歴 

1957年生まれ。  名古屋大学医学部医学科卒業  国立病院医療センター内科・呼吸器科で研修の後、東京大学物療内科入局。 同大大学院終了。  日本学術振興会特別研究員を経て、米国メイヨークリニック生化学・分子生物学教室、ユタ大学医学部呼吸器内科に留学。  帰国後、2006年より東京大学大学院医学系研究科講師、東大病院アレルギーリウマチ内科副科長。 同診療科アレルギー・免疫学。 主な研究テーマは、肺の免疫応答、特に樹状細胞機能の解析と制御。

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